「和紙漉き日記」 記:栗太郎

| 2012.05.18 Friday

僕は今、長期出張で、美濃和紙の里会館にきている。
「和紙に込めた光たち」っていう、展示会なんだ。
お友達のあつみちゃんも一緒だよ。

僕は入口で、たくさんのお客様をお出迎えしているんだ。
特別に作ってもらった、お気に入りの椅子に座ってね。



僕は会場のこと、いろいろ知ってるんだ。
2回来てくれた人のことも、ちゃんとわかるんだよ。

だから、「僕が展示会の様子を、全部書いてあげるね!!」
と、はりきって、美紀さんに言ってみた。

・・・が、自分のところだけでいいって言われた。

どうやら美紀さんは、今書きたいことがたくさんあるらしい。
僕は大人だから、優しい微笑みで譲ってあげたんだ。


僕の新作、 「和紙漉き日記」を紹介するね。
10ページの絵日記なんだよ。

僕は、自分で和紙を漉いてみたいと思った。
漉いた和紙で、作りたいものがあるんだ。

でも、僕は和紙のことよく知らない・・・
和紙って何からできているのかな。
どうやって1枚の紙になるのかな。
・・・いろいろ考えていたら、何だか楽しみになってきたんだ。

最初に僕は原料を取りに行った。
和紙の原料のひとつで、こうぞっていう植物なんだ。



採ってきたこうぞは、蒸して皮をはぐんだよ。
和紙に使うのは、内側の白い皮の部分なんだ。
僕、初めて知ったよ。

蒸す時に、僕の好きなジャガイモも一緒に蒸したんだ。
後でみんなで食べるのが楽しみだな。



はいだ皮を煮て叩いて柔らかくするんだよ。
どんどん形が変わっていくんだね。
和紙漉きの原料が出来てきたよ。

原料とトロロアオイっていう植物からとった「ネリ」を混ぜるんだ。
しっかりよく混ぜることが、いい和紙を漉くための大切な作業なんだって。
僕の信頼するお友達のカノウさんが、そう言ってたんだ。
美紀さんならともかく、カノウさんが言ってたから間違いない。
僕は何度も何度もよく混ぜたよ。



いよいよ和紙漉きだ。
見ていたら、簡単そうに見えたけど、いざ自分でやってみたら厚さにムラができてしまった!
均一な厚さに漉くのは、大変なことなんだな・・・
僕は何度も漉いてみた。
何度もやって、少しずつ覚えていくんだね。

漉いた和紙を板に貼るんだ。



それから、外に干して乾かした

ようやく和紙の完成!
長い道のりだったなぁ・・・
大切なものには、時間と手間がかかるんだね。


この前、展示会場で熱心に僕の日記を見てくれる人がいた。
その人は、元和紙漉き職人さんだった。

僕が、和紙を同じ厚さに漉くのにとても苦労した話をしたら、
その職人さんは、感覚だけでいろいろな厚みの和紙を漉き分けていたって話してくれた。
すごいなぁ・・・・・・

僕の絵日記を見ながら、和紙ができるまでの細かな作業や、大事なことも
教えてくれたんだよ。
僕の知らないことが、まだまだたくさんあったんだ!!
僕、もっと詳しい日記を書きたいなって、その時思ったよ。
作る人に会うと、想いが深くなるんだね・・・


出来あがった和紙で、僕は今、あるものを作っているんだ。
もう半分くらいできたかな・・・



大切な和紙だから、大切に作っていくからね。

和紙漉き日記、また続きを書いてみようかな・・・



「紙すき体験」 美濃和紙の里会館

想いの和紙

| 2012.05.14 Monday

只今展示中の「和紙に込めた光たち」
和紙スイーツの立体作品を、長さ3、6メートルの台3台に飾っています。
各台にはセンタークロスのように、温かな白い和紙を敷きました。
その和紙は、想い深く・・・・・・




小原和紙工芸作家の加納登茂美・恒ご夫妻
数年前からご夫妻の和紙を、展示で使わせて頂いています。
お人柄のまま、和紙もまた趣き深く温かく・・・
素敵な和紙のその向こうにあるのは、やはり素敵な人なのだと感じます。

今回の展示用に、和紙をお願いしました。
受け取りの日、まだディスプレイも決まらず、余裕のない私。
用意して下さった和紙を目にして、感激しました・・・・・・
焦る気持ちをも包むように、その和紙は季節の優しい花が添えられた包みの中にありました。



ひとつひとつの事に、何と丁寧に心豊かに向き合ってみえるのだろう・・・
和紙と共に、大切な何かも頂いたようです・・・

包みから出てきた和紙は、どれも作品のイメージにぴったり!
嬉しくて嬉しくて・・・
私の作品は、主に洋のイメージ
それに何て優しく似合う和紙



すると、「倉さんの作品に寄り添って漉きました・・・」と。
どの和紙も、作品を想い、新たに漉いて下さったものでした。

・・・展示直前の焦る気持ちが、心穏やかに、また強く変わっていくのを感じました・・・


展示に使用したのは、優しく温かな白い和紙
どの白にも、豊かな表情があります。

3つのテーブルを、「和菓子」洋菓子」イメージの洋菓子」とテーマごとに飾り、
作品に合わせて、白い和紙に色を少し加えました。
和紙は、優しく寄り添うように作品を包んでくれます・・・

「和菓子」
は、「四季」をイメージ
縦に筋が入った和紙
その筋は指の跡・・・他より薄くなっています。
そこに、季節の色を加えました。

春は桜色、夏は水色、秋は夕焼け色、冬はグレーがかった青を・・・
和紙が透けるので、やんわり色が映ります。




「洋菓子」
は、「水玉」をイメージ
レース模様のような可愛い和紙を敷きました。
丸い形がマカロンのよう・・・

丸くちぎった和紙を所々入れていきます。
水玉模様の愛らしいテーブルができました。




「イメージの洋菓子」
は、「雨上がりの虹」をイメージ
落水紙(らくすいし)という、穴のあいた和紙を使います。
この穴は、和紙がまだ濡れている時に、上から落とした水の跡
4作品の台と、和紙の両端に虹を入れました。




作品に寄り添って漉いて下さった和紙
温かな想い溢れる和紙

忘れられない大切な和紙


小原和紙工芸作家・加納登茂美、恒ご夫妻

美濃の和菓子(5)「象る」

| 2012.05.10 Thursday

現在展示中の「和紙に込めた光たち」
「美濃の和菓子作品」5軒目最後の信洲屋本店さん
制作で感じたキーワードは、「象る」(かたどる)

「象る」
●黒助
●ほし柿

『黒いういろう「黒助」
その表面には、筋のような模様がありました。
それは竹の型に入れることで、生まれた形。
その凹凸を表面につけてみる。
よく見ると、筋の片側はシャープで、片側はゆるい線。
一体感を出すために、また薄い和紙で全体を覆ってみる。
いろいろ考え形作っていく。
お菓子の形は楽しい想いが広がる形。』





~ お店に伺って ~
「黒助」の表面の筋は、何の跡だろう・・・?
模様は、きっとこのお菓子の大切なデザイン。

もう一度訪れて、ご主人に直接伺ってみました。
するとすぐにその型を持ってきて、丁寧に説明して下さいました。
使い込まれた竹の型・・・

型もまた愛しむように、使っていらっしゃるのだな・・・



お店は、大正初期からのご創業。
時の流れを閉じ込めたような空間が、また趣き深いです。
小さな彼も、興味深々の様子でした・・・



信洲屋本店


こうしてお店の方にお話を伺いながら、美濃の和菓子を制作していきました。

1軒目・小川屋さんの「美濃の若鮎やき」から始まり、5軒目・信洲屋さんの「ほし柿」まで、試行錯誤で作った全10作品。
途中行き詰った時、思い浮かべるのは、和菓子職人さんたちの温かな笑顔・・・・・・

和紙スイーツの元にあるのは、「手作りのお菓子」
作る人と食べる人の顔が互いに見え、お菓子を通して気持ちの受け渡しもしているように感じます。
今回の制作で、美濃の和菓子は私にとって特別なお菓子となりました。

ご協力頂きました5軒の和菓子店様、美濃和紙の里会館様に心よりお礼申し上げます。

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