このお花、紙で出来ています。
「ファイバークラフト紙」
水で濡らすと柔らかくなり、乾くと硬くなる不思議な紙です。
最近、講座を受けてその面白さに感激しました。
お花の形にファイバークラフト紙を切り、好みの色に染めて、直接手で形作っていきます。
染めている様子は、透明な液に花が浮かんでゼリーのよう・・・。
それぞれの色に染まり、それぞれの花になってゆく。
一緒に受講している方と、お互いの染具合や形で触れ合えるのがまた楽しい。
1枚の平面の紙が、だんだん花の形になってゆく・・・。
作りながら、感激と楽しさが溢れます。
教えて下さる先生のお人柄もまた優しいお花のよう・・・。
本当にこのアートを愛しく大切になさっているのだな・・・。
その空気が柔らかに伝わり、講座がより楽しく温かく感じられます。
出来上がった作品はブローチになり、身に着けられるのがまた楽しい。
皆さんその場で服に着けたり、バックに着けたり・・・。
それぞれが自分色に染めた作品は、個々の雰囲気にぴったり。
華やかな作品を囲み、また華やかな笑顔に包まれます・・・。
自分の作った作品を身に着けられる喜び・・・。
これからの季節、温かなバックにつけてみようかな・・・。
ファイバークラフト教室
ファイバークラフト
甘い薫り
窓を開けると、甘い香り・・・。
小さな小さな花があつまる金木犀。
ふんわり漂う秋の香りに、甘い記憶も柔らかに浮かんでくるようです・・・。
以前、和紙スイーツの展示会場で、
お客様から「作品に甘い香りがつけてあるのですね。」
と言われたことがあります。
作品に香りはつけていないことをお伝えすると、
「確かに作品から甘い香りがしたのですが・・・」
と不思議そうにされていました。
イメージの薫り・・・?
私もまた不思議に思いながらも、とても嬉しく感じました。
・・・甘いイメージの色は、優しいピンクやオレンジや黄色でしょうか。
最近、そんな甘い色合いの和紙を購入。
その和紙を背景に、これから額装作品を制作予定。
スイーツから広がるイメージの世界・・・。
そこには目に見えないものを形にする楽しさが溢れるようです。
甘色の和紙に、透けるほどに薄い典具帖紙(てんぐじょうし)を重ねて、
甘く温かな作品を作りたい・・・。
どんなデザインを重ねていこうかな・・・。
しばらくは、和紙と向き合いながらのイメージ作り。
作品から甘い薫りが届けられたら嬉しいな。
「僕の恋」 記:栗太郎
僕は初めて恋をした・・・。
相手は苺のショートケーキさん。
名前は「イチエさん」って言うんだ。
校庭で文化祭の練習をしていたら、甘い音色が聞こえてきた。
僕はこっそり練習を抜け出して、その音色に近づいて行ったんだ。
すると、バイオリンを奏でる苺のショートケーキさんの姿があった・・・。
それが僕の恋の始まりだった。
家に帰ると、夕飯は僕の大好物の「栗ご飯」だった。
今年初めての栗ご飯。
でも僕は何だか胸がいっぱいで、2杯しか食べられなかった・・・。
お母さんは不思議そうに僕を見ていたな。
それから何日か考えて、僕は手紙を書くことにした。
何度も何度も書き直した。
想いを伝えるって、難しいね。
ようやく完成した手紙を和紙の封筒に入れて、イチエさんに渡した。
笑顔で受け取ってもらえた時には、舞い上がるようだった。
・・・でも、大変なのはこれからだった。
毎日、ドキドキして、落ち着かない。
何も手につかないとか、うわの空とかって、こういうことなんだ。
大好きな栗ご飯も、たった1杯しか食べられない・・・。
そんな日が続いたんだ・・・。
それから何日かして、僕は見てしまった・・・。
スラリと長身の、チョコレートケーキさんと楽しそうに話しているところを・・・。
チョコレートケーキさんと言えば、かっこ良くて、スポーツ万能で生徒会長もしている。
・・・僕はクラスの園芸委員・・・。
僕は、僕は・・・とてもショックだった・・・・。
がっクリ・・・・・・。
しばらくそこを動けなかった・・・。
ずいぶん経ってから、もう一度ふたりの様子を見た。
そして僕は気づいたんだ。
チョコレートケーキさんが手に持っているのは、外国のおしゃれなファッション誌。
本屋さんで見たことあるぞ・・・。
そうか、僕もその本に載っているような素敵な服を着たら、苺のショートケーキさんと
お話しできるかも知れない!
こんな時でも、僕はなかなか冷静だなぁ。
これから同じ本を買って、最新の服を買うんだ。
僕はあきらめないぞ!!
「お兄ちゃん、どこに行くの?」
妹の栗子が聞いてきた。
僕は栗子と一緒に、最新ファッション誌に載っている秋の新作を見に行くことにした。
カラフルな色の服がたくさんあった。
かぼちゃ色、木いちご色、抹茶色、紅芋色などなど・・・みんなカラフルだなあ。
こんな素敵な服を着たら、きっと僕もチョコレートケーキさんみたいになれるね!
どれにしようかなぁ・・・。
目移りしていたら、妹の栗子が耳元でささやいた。
「お兄ちゃん、やっぱり栗色がお兄ちゃんには一番しっクリくるね。」・・・と。
・・・僕より栗子の方がずっと冷静だった。
僕は何も買わずにお店を出た。
帰り道、夕焼けがとてもきれいだった。
「お兄ちゃん、この花、何ていう名前?」
「萩の花だよ。秋の花なんだ。」
「お兄ちゃん、お花の名前、何でも知ってるんだね。」
行きは夢中で気づかなかったけれど、お店までの道のりはなかなか遠かった。
・・・栗子もよくついてきたなぁ・・・。
家に帰ると、今年3回目の栗ご飯だった。
お腹がすいて、僕はいつものように4杯食べた。
美味しいなぁ・・・。
栗子も、お父さんも、お母さんもいつもより1杯多く食べた。
僕は何だか嬉しかった。
食べ終わると、栗子はその場に寝てしまった。
お父さんは少し前かがみに歩きながら、ちょっと苦しそうに階段を上がっていった・・・。
お母さん、いつもよりたくさん炊いてくれたんだね。
僕は何だか元気が出てきた。
僕、あきらめないで頑張るからね。
今日、僕は気づいたんだ・・・。
僕はずっと前から、大切なもの、たくさん持っていたんだね。