ボルドー記(11)&パリ 記:栗太郎

| 2012.12.29 Saturday

あこがれのフランス・・・

僕はとても楽しみにしていた。
服もカメラもユーロもカイロも、もう随分前から準備万端だったんだよ。

それに僕のおじいさんは、フランス人なんだ。
小さい頃、僕も一度フランスに行ったことがあるんだって。
毎日いろんなところを見てまわるんだぁ・・・。

・・・・・・ でも今回、僕の出番はほとんどなかった ・・・・・・。

美紀さんは、展示会で毎日とても忙しくて、特に最初の1週間なんて
僕はずっと放っておかれてたんだよ!
2週間目になって初めて、美紀さんのカバンに入って外に出たくらいなんだ。





それでも、・・・・・・僕は毎日楽しかった。
だって部屋の中が、何とも愉快なんだ!

美紀さんの部屋は、カイちゃんと、チョシちゃんとの3人部屋・・・それに僕。
毎日みんな疲れて帰って来てるのに、夕食後には本当に楽しそうに笑ってるんだ。





朝起きたら、美紀さんとカイちゃんが漫才のようにしゃべっていたこともあった。
僕はあまりに疲れて、頭がおかしくなったのかと思ったくらいだ。
ふとみたら、チョシちゃんは何事もないかのようにスヤスヤ寝ていた・・・。

それくらい、みんなが自由で楽しい生活だったんだ。
美紀さんは、どちらかと言えば性格が悪い方だから、二人がとてもいい人だったんだと思う。


観光も、したんだよ。
サンテミリオンっていうところと、ポムロールっていうワイン地区へ行ったんだ。
ボルドーはワインの街だからね・・・。
僕は未成年だから飲めなかったけど、楽しかったよ。
美紀さんの帽子の上から眺めた葡萄畑は、美しかったな・・・。











ボルドーの後、パリにも行ったんだ。

やっぱり、パリってスゴイ!
ここではたくさんの美術館に行ったよ。

ノートルダム寺院の屋上からの眺めは凄かった。






ルーブル美術館に、ヴェルサイユ宮殿、装飾美術館、中世美術館・・・
いくつもいくつも見て歩いたんだ。
さすが芸術の都パリだなぁ・・・。



















あまりに素晴らしくて、僕の小さな体ではとても受け止められないくらいだった。
夜寝たら、空っぽになって、またたくさん受け止められたらいいのにな・・・。

あこがれのエッフェル塔にも行ったんだ。
ぼんやり眺めながら、いろいろ感じてたんだ・・・。







そんな素晴らしいパリもあっという間だった。

・・・とうとう最後の日。
カイちゃんと美紀さんと僕は、セーヌ川沿いをぶらぶら歩いた・・・。

おいしそうなパン屋さんに立ち止まったり、ウィンドーのディスプレイを眺めたり、
お花屋さんにも寄ったよ。

カイちゃんも美紀さんも一つ一つに感動して、パルミエだのヒヤシンスだのうるさかった。
・・・・・・でもいいんだ。
僕は特別なことをしなくても、こんな何気ないことが好きなんだ。














カイちゃんが、素敵なビストロを見つけてランチをしたんだ。
感動の美味しさで、心の中まで温かくなった。





そういえば、ボルドーで美紀さんたちは、いつも普通のものを部屋で楽しそうに食べてたな・・・。
どんな美味しいものを食べるかよりも、どんな人と、どんなふうに食べるかが大切なのかな。

普通に歩いているこの道、この風景ももうあとわずかなんだね・・・。
何だかとっても不思議な感覚だよ。
フランスってとても遠いところなのに、今は普段の道みたいなんだ。
すごいところにいるのに、普通みたいなんだ・・・。





アパートに帰ってしばらくすると、チョシちゃんがお客さんを連れて帰ってきた。
ナント、ボルドーで別れたカノウさん家族と、このパリで偶然会ったんだって!
みんなで一緒に、温かいコーヒーを飲んだんだ・・・。


そのあと、スーツケースに荷物を詰めた。
僕、フランスで特別なものは買わなかったけど、
何だか見えないものがたくさん詰まっていっぱいだった。


僕の大切にしていたものは、フランスでも大切なものだったのかな・・・。




 

「和紙漉き日記」 記:栗太郎

| 2012.05.18 Friday

僕は今、長期出張で、美濃和紙の里会館にきている。
「和紙に込めた光たち」っていう、展示会なんだ。
お友達のあつみちゃんも一緒だよ。

僕は入口で、たくさんのお客様をお出迎えしているんだ。
特別に作ってもらった、お気に入りの椅子に座ってね。



僕は会場のこと、いろいろ知ってるんだ。
2回来てくれた人のことも、ちゃんとわかるんだよ。

だから、「僕が展示会の様子を、全部書いてあげるね!!」
と、はりきって、美紀さんに言ってみた。

・・・が、自分のところだけでいいって言われた。

どうやら美紀さんは、今書きたいことがたくさんあるらしい。
僕は大人だから、優しい微笑みで譲ってあげたんだ。


僕の新作、 「和紙漉き日記」を紹介するね。
10ページの絵日記なんだよ。

僕は、自分で和紙を漉いてみたいと思った。
漉いた和紙で、作りたいものがあるんだ。

でも、僕は和紙のことよく知らない・・・
和紙って何からできているのかな。
どうやって1枚の紙になるのかな。
・・・いろいろ考えていたら、何だか楽しみになってきたんだ。

最初に僕は原料を取りに行った。
和紙の原料のひとつで、こうぞっていう植物なんだ。



採ってきたこうぞは、蒸して皮をはぐんだよ。
和紙に使うのは、内側の白い皮の部分なんだ。
僕、初めて知ったよ。

蒸す時に、僕の好きなジャガイモも一緒に蒸したんだ。
後でみんなで食べるのが楽しみだな。



はいだ皮を煮て叩いて柔らかくするんだよ。
どんどん形が変わっていくんだね。
和紙漉きの原料が出来てきたよ。

原料とトロロアオイっていう植物からとった「ネリ」を混ぜるんだ。
しっかりよく混ぜることが、いい和紙を漉くための大切な作業なんだって。
僕の信頼するお友達のカノウさんが、そう言ってたんだ。
美紀さんならともかく、カノウさんが言ってたから間違いない。
僕は何度も何度もよく混ぜたよ。



いよいよ和紙漉きだ。
見ていたら、簡単そうに見えたけど、いざ自分でやってみたら厚さにムラができてしまった!
均一な厚さに漉くのは、大変なことなんだな・・・
僕は何度も漉いてみた。
何度もやって、少しずつ覚えていくんだね。

漉いた和紙を板に貼るんだ。



それから、外に干して乾かした

ようやく和紙の完成!
長い道のりだったなぁ・・・
大切なものには、時間と手間がかかるんだね。


この前、展示会場で熱心に僕の日記を見てくれる人がいた。
その人は、元和紙漉き職人さんだった。

僕が、和紙を同じ厚さに漉くのにとても苦労した話をしたら、
その職人さんは、感覚だけでいろいろな厚みの和紙を漉き分けていたって話してくれた。
すごいなぁ・・・・・・

僕の絵日記を見ながら、和紙ができるまでの細かな作業や、大事なことも
教えてくれたんだよ。
僕の知らないことが、まだまだたくさんあったんだ!!
僕、もっと詳しい日記を書きたいなって、その時思ったよ。
作る人に会うと、想いが深くなるんだね・・・


出来あがった和紙で、僕は今、あるものを作っているんだ。
もう半分くらいできたかな・・・



大切な和紙だから、大切に作っていくからね。

和紙漉き日記、また続きを書いてみようかな・・・



「紙すき体験」 美濃和紙の里会館

「しあわせもの」記:栗太郎

| 2012.01.18 Wednesday

「栗太郎は、幸せものね。」

最近、美紀さんは僕を見る度にそう言う。

でもそれは本当なんだ。
来月の展示会のことを考えると・・・僕はとってもしあわせ。

今度の展示会は、神戸で3人展なんだ。
陶芸家の「フジヒラさん」と、ガラス作家の「チョウシさん」と一緒だよ。
とっても楽しそうな展示会なんだ。

でも僕はあやうく、この展示会に出られないところだった!
神戸で打ち合わせの日、「今回、栗太郎は関係ないから」と、僕はおいていかれた。
つぶらな瞳でじっと見つめてみたけれど、美紀さんには何の効果もなかった。
コートのポケットに忍び込んでみたものの、美紀さんは別のコートを着てさっさと出かけて
行ってしまった。

・・・豆まきの鬼の役は、絶対に美紀さんにやってもらおうと、この時僕は固く誓った・・・。

でもね、芸術がわかる人はやっぱり見る目がちがうんだよね。
僕の写真を見たギャラリーのオーナーさんと作家さんが、ぜひ僕に出て欲しいと言って
くれたんだって!!
僕は得意気に美紀さんを見たけれど、やっぱり何の効果もなかった。
でもそんなことはいいんだ。
みんなのおかげで、僕は無事に展示会へ出られることになった。


フジヒラさんは、とってもいい人。
僕に、大好物の栗蒸し羊羹をくれたんだよ!
あまりの美味しさに僕は倒れそうになった。
僕、食べ物のご恩は絶対に忘れないからね。





チョウシさんも、すごくいい人。
案内ハガキの切手のところに、僕の写真を使ってくれたんだ!
僕、とっても嬉しくて、神戸の友達に手紙を書いたよ。


 


でも僕がしあわせなのは、これだけじゃないんだ。

フジヒラさんは、僕のために「椅子」を作ってくれるんだって!
ちゃんと僕のサイズを測ってくれたんだ。
僕にピッタリの椅子なんだって!

そしてその椅子を置く「木の椅子」を、チョウシさんが作ってくれるかも・・・って。
チョウシさんはガラスだけじゃなくて、他にもいろいろ作れるんだって。
あぁ・・・僕はなんてしあわせ。

でも、まだあるんだよ。
展示会場で、本物のお茶とお菓子でティータイムのイベントがあるんだ。
お菓子は、お菓子の先生が作ってくれる手作りなんだよ。
それも「栗太郎と一緒にティータイム」っていうタイトルなんだ!!
僕、主役になるなんて生まれて初めてだ!

こんなにたくさんいいことことがあって、夢みたいだなぁ・・・。





僕を想って作ってくれる椅子・・・。
本物のお菓子と、僕の仲間たちのお菓子に囲まれて・・・。
僕、そこに座ったらどんな気持ちになるのかな。
きっと嬉しくて嬉しくて、ずっとニコニコしているんだろうなぁ・・・。
あぁ・・・とっても楽しみ。


こんな小さな僕が、みんなとつながっていけるなんて・・・。
僕は本当にしあわせもの。


「バレンタインデー・ティータイム展」



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