「初めての旅」 記:栗子

| 2013.11.20 Wednesday

お兄ちゃん、いいな。
またきれいにしてもらってるんだ・・・。
もうすぐ展示会だものね。



いいなあ・・・お兄ちゃん。
いろんなところへ行けて・・・
新しいところって、どんな毎日なのかな。
毎日新しいこと、いっぱいなのかな・・・

いつも私は家でお留守番
ずっと同じところで、同じ毎日なんだよ。

でもね、
今回はね・・・
私も後から行くんだ。

初めての旅なんだよ。





ああ・・・きれい。

初めての景色
初めての場所
初めての空気

旅は、毎日初めてがたくさん続くんだね。
景色も空も、どんどん変わっていくよ。
お兄ちゃんも、この空見たのかな。
お兄ちゃんの見た空は、どんな色だったのかな・・・




ああ、あそこを歩いてるのは敦美ちゃん!
ここが展示会場なんだね。







ここが入口!
敦美ちゃん、ありがとう。
お兄ちゃんの部屋に行って来るね。

お兄ちゃん、どこにいるのかなぁ・・・。
たしか、お気に入りの椅子に座るって言ってたから・・・
ああ、あぁ・・・いたいた!

今回は他の仲間と一緒なんだね。





お兄ちゃん、ちょっと緊張してる?
ちゃんと笑顔でいないと、お客さんも楽しくないよ。





えっ?
あの迫力ある可葉さんも、笑ってくれたから大丈夫だって?
それなら安心だね。

お兄ちゃん、私、これからいろいろ旅してくるからね。

えっ?
何度も言わなくても、ちゃんと買ってくるから大丈夫!
じゃあまたね、お兄ちゃん。




旅が続くって、どんな感じなのかな・・・
見る景色が全部新しい毎日って、どんな毎日?
何か変わるのかな?
何かが生まれるのかな?



























見たもの、
感じたもの、
毎日全部ちがったよ。

次の日、同じ場所に行ってもまた新しいから不思議だね。
その日、その時の空
その時の色
その時の匂い・・・
ずっと残っていくんだね。
ずっとなくならないんだね。
旅って、宝物がふえていくみたいだね。


旅してたら、一つ一つが新しかった・・・
一つ一つを大事に感じてたからかな。
ひとつひとつ大切にしたら、どこにいても毎日が新しいのかな・・・


お兄ちゃん、どうしてるかなあ・・・
帰ってきたら、何から話そうかな。






花のところへ

| 2013.09.10 Tuesday

いつの間にか咲いていたミニ薔薇。
蕾にも気づかないまま。
庭の片隅にあった鉢も、花が咲いたとたん、急に場所を変えたり、向きを変えたり。
花がよく見えるようにと・・・





そんな時、祖母のことを思い出し、
慌てて元に戻すこと、しばしば・・・

祖母との想い出は、日々のこと。
たくさんの何気ないこと。
それはだんだんと色濃くなり、
時々作品の背景になっていく・・・・・・


花が大好きだった祖母。
小さな庭に並べた鉢植えを眺めるのが、祖母の楽しみ。

ある時、鉢の一つにきれいな花が咲いて・・・
祖母の部屋からよく見えるようにと、叔母が鉢の向きを変えました。
次の日、なぜかその鉢は元の向きに。
もう一度、見えるようにと向きを変えると、また元に戻っている。

不思議に思った叔母が、祖母に尋ねると、
「花には、花の好きな向きがあるから」・・・と。

せっかくきれいに咲いた花が、ここから見えないよ・・・と叔母が伝えると、
「花が見たい時は、自分が花のところへ行って見ればいいんだよ。」・・・と。





日々の何気ないこと。
祖母との小さな思い出
大切な想い出





花のところへ

大切な想いを、小さな作品に込めながら・・・


「おみやげ」 記:栗太郎

| 2013.03.10 Sunday

「栗太郎も来れば良かったのに」





美紀さんは、楽しそうに神戸から帰ってきてそう言った。

1年前、僕は初めて神戸での展示会に出た。
そこで僕はたくさんの笑顔に囲まれて、毎日とても楽しかった。
フジヒラさんと、チョウシさんっていうお友達もできたんだよ。
2人の作品は、いつも愛用しているんだ。


美紀さんは今年も新しいお友達ができたようで、楽しそうだった。
僕にいろいろな写真を自慢げに見せてくれた。

僕も行きたかったけど、大切な用事があったんだ。
僕だって僕の都合があるんだからね。
でも・・・みんなには逢いたかったなぁ・・・。

しょんぼりしていたら、美紀さんがカバンの中から二つの袋を出した。

それは僕の友達からのお土産だった!!
しかも僕の大好きなものばかり!

フジヒラさんからは、大好物の栗蒸し羊羹!!
一番好きなお店のものなんだって。
嬉しいなぁ。
なんてイイ人なんだ!




チョウシさんは、ニオイスミレっていう、とても良い香りがするスミレをくれたんだ。
僕が花が大好きで、園芸委員までしてるの知ってたのかな。
あぁ・・・甘い匂い・・・。





二人とも、なんて優しいんだ・・・。
美紀さんにも少しは見習ってもらいたいもんだ。

僕はニオイスミレを鉢に植え替えた。
栄養いっぱいに育った、元気なお花だなぁ・・・





それから僕の椅子に座って、栗蒸し羊羹を食べた。
去年もらったのとは、また違う美味しさだ。
花を眺めながら、僕はとても温かな気持ちになった。

ずっと会っていないのに、何だかすぐ近くにいるみたいだから不思議だね。
これからも椅子に座ったり、スミレを見たらいつも思い出すね。





想えば、近くにいるんだね。



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