僕の色(3) 記:栗太郎

| 2019.05.07 Tuesday

「よかったら私共と一緒に染めてみませんか?」

僕の信頼する小原和紙のカノウさん。
僕が苦労しているのを知って、そう声をかけてくれた。
いつも心にかけてくれる優しいカノウさん。
美紀さんにも少しは見習ってほしいもんだ。

僕は和紙とハケと板を持って、カノウさんのところへ勉強に行くことになった。





空気も澄んでいいところだなぁ・・・
カノウさんは僕の為に栗のイガを煮詰めた液を用意してくれていた。
栗の染液!!
僕は大感激した!





網枠に和紙をのせて、染液に浸す。
僕は初めての作業にワクワク・ドキドキした。

イガの染液はすごく濃い色だった。
どんなに濃く染まるかと思ったら、ひきあげたその色は優しい茶色だった。






僕が試したハケ染めもやっていいかなぁ・・・
そっとたずねたら、カノウさんは快くやってくれた。
やっぱり温かな人はちがうよなぁ。

カノウさんがハケで塗る。
動かすその手は、僕とは全然違う。
「繊維が充分色を吸うまで・・・」と、和紙と会話しているようだった。





塗っては干し、塗っては干しを繰り返した。
いろいろな条件で試した。
いろいろな色が出来た。
自然な色だから、1枚づつ違っていいんだよね。





最後にバイセンザイをかけた。
僕と同じミョウバンだった。
カノウさんはバイセンザイによって色がちがうんだよと、テツバイセンを半分塗ってくれた。
少しするとそこが黒っぽくなってきた。



深い・・・
僕は思わずつぶやいた。
まだまだ勉強することいっぱいだなぁ。

カノウさんは栗の染液をペットボトルに入れて僕にくれた。
僕はとても嬉しかった!
「帰ってから何回も染めてみるね。」
そう約束して、もらった染液を美紀さんに取られないよう車に積んだ。

作業の後、みんなでお茶を飲んだ。
カノウさんが摘みたてのミントでハーブティーを作ってくれた。
爽やかな香りが工房いっぱいに広がった。
美紀さんが焼いたクッキーを食べながら、いろいろな話をした。





僕はとても温かな気持ちになった。
やっぱりお菓子とお茶の時間が好きだなぁ・・・
僕、栗色ができたら、次はいろいろなお茶で染めてみようかな。