朝起きると、部屋中いい匂いがした。
甘い匂いだ・・・。
キッチンからだよ。
美紀さん、朝からケーキ作ってるのかな・・・。
ちょっと覗いてみようっと。
ああぁ・・・いい匂い。
「美紀さん、おはよう。」
「何作ってるの?」
「ロールケーキ?」
「それともショートケーキ?」
「えっ!?」
「モ、モンブラン!!」
「モンブラン、作ってるのぉ!!!」
モンブランは僕の大好物のケーキだ。
嬉しいなぁ。
でも、どうして急に作ってくれたんだろう・・・。
この間、庭の草取り手伝ったからかな?
それとも和紙の勉強一生懸命したからかな・・・?
う・・・ん。
何だかよくわからないけど、僕のために大好物のケーキを作ってくれるなんて、
美紀さん今日は優しいじゃないか。
おぉっ!!
今からマロンクリーム絞るんだね。
美紀さん、僕の大好きなマロンクリームたくさん絞ってね。
あれ・・・?
今日のクリーム、いつもと違うよ。
僕、初めて見る色だ。
黄色のクリーム?
僕のマロン色とは違う色だ・・・。
それにモンブランは秋のお菓子だよ。
いつも季節を大切にしている美紀さんが、どうして5月に秋のお菓子を作るんだろう・・・。
今日は5月の4日・・・。
黄色いモンブラン・・・。
・・・・・・・・・・・・。
そうかぁ!!
わかったよ!
このケーキ、今日届けに行くんだね!
「ねぇ、僕も一緒に行っていいかな。」
「えっ?」
「ちがうよぉぉ~。」
「ケーキが食べたいからじゃないよぉ。」
僕も伝えたいんだ。
「おめでとう」って。
僕、どんなふうに「おめでとう」って言おうかな。
いつものおもしろい顔で「おめでとう」がいいかな。
それとも、真面目な顔で「おめでとう」がいいかな。
優しく「おめでとう」がいいかな・・・。
何だか「おめでとう」って何度も言ってたら、僕も嬉しい気持ちになってきたよ。
大好物のケーキを見たら、どんな笑顔になるのかな・・・。
僕は何も持っていないから、心を込めて言うよ。
「お誕生日、おめでとう。」
僕の贈り物 記:栗太郎
| 2011.05.04 Wednesday