僕の色(2) 記:栗太郎

| 2019.04.18 Thursday

最初からうまくいくはずないんだよねぇ・・・

僕が初めて染めた和紙
出来上がった色は、僕の色とはずいぶんちがっていた。
色も薄いし、色の感じもちょっと暗いなぁ・・・
どうしたらいいんだろう。

僕はまた紅茶を飲みながら考えていた。
明るい色にするには・・・
!!!
そうか、違う紅茶を使ってみよう!

明るい色の紅茶があるはずだ。
そうそう、たしか棚に高級そうな缶の紅茶があったぞ。
それを使ってみようと、そっと缶を棚から出して・・・

・・・その時、急に寒気がした。
後ろを振り返ると、美紀さんが腕組みをして立っていた。
僕は青ざめた・・・
でも勇気を出して、訳を話した。
一生懸命説明した。
が、あっけなくダメだと言われた。

美紀さんのケチ!
その後引き出しを探していたら、ティーパックがあった。
僕はそれを使うことにした。





僕は2つの紅茶を比べてみた。
椅子の上からのぞくと・・・
あぁ・・・色が違う。濃さも違う。

それから僕は塗る回数を変えながら、何度も何度も染めてみた。
薄かったり、濃すぎたり、やぶれたり・・・
出来ることいろいろ試した。
染まった和紙がどんどん増えていった。





赤みがかった色、黄みがかった色
それぞれの良さがあるんだな。
自然の色ってどれもステキなんだな。
だんだん僕の色に近づいてきたよ。

これ、この色!
僕のマロン色にすごく近いよ!!
これでいいんじゃない!





僕は嬉しくて、美紀さんに見せた。
「とうとう終わったよ~!」

すると、予想外の答えが返ってきた・・・
「これからが始まりだよ。」

なぜ・・・?
なんで!
どうしてぇ~!!

えっ!?
染める和紙、この和紙じゃないの?
もっと厚みのある典具帖紙なの!?
大きさも違うのぉ!!

その時僕は気づいた。
これからが本当の始まりなんだと・・・
染めの道は厳しい。
美紀さんも厳しい。
これから僕は2つの厳しさと戦っていくんだ。

でもいいんだ。
自分で染めるって、スゴイことなんだ!
染めること、少しずつ面白くなってきたよ。
少しずつ好きになってきたよ。