展示会搬入の朝、
段ボールをかかえて歩いた道。
朝焼けがとてもきれいだった。
美味しいものは、分け合って。
小さなキッチンで作った、温かな料理。
何度も何度も歩いたボルドーの石畳
夢のような3週間でした。
最後の夜、
ともに過ごした温かな仲間と、
いつものように部屋でくつろいで・・・
毎日使っていたフォークの先を見つめながら、
ぼんやりと・・・かけがえのない時間を想う。
今、この場所が一番幸せだと感じながら・・・。
ボルドー記(12)今、この場所が
ボルドー記(11)&パリ 記:栗太郎
あこがれのフランス・・・
僕はとても楽しみにしていた。
服もカメラもユーロもカイロも、もう随分前から準備万端だったんだよ。
それに僕のおじいさんは、フランス人なんだ。
小さい頃、僕も一度フランスに行ったことがあるんだって。
毎日いろんなところを見てまわるんだぁ・・・。
・・・・・・ でも今回、僕の出番はほとんどなかった ・・・・・・。
美紀さんは、展示会で毎日とても忙しくて、特に最初の1週間なんて
僕はずっと放っておかれてたんだよ!
2週間目になって初めて、美紀さんのカバンに入って外に出たくらいなんだ。
それでも、・・・・・・僕は毎日楽しかった。
だって部屋の中が、何とも愉快なんだ!
美紀さんの部屋は、カイちゃんと、チョシちゃんとの3人部屋・・・それに僕。
毎日みんな疲れて帰って来てるのに、夕食後には本当に楽しそうに笑ってるんだ。
朝起きたら、美紀さんとカイちゃんが漫才のようにしゃべっていたこともあった。
僕はあまりに疲れて、頭がおかしくなったのかと思ったくらいだ。
ふとみたら、チョシちゃんは何事もないかのようにスヤスヤ寝ていた・・・。
それくらい、みんなが自由で楽しい生活だったんだ。
美紀さんは、どちらかと言えば性格が悪い方だから、二人がとてもいい人だったんだと思う。
観光も、したんだよ。
サンテミリオンっていうところと、ポムロールっていうワイン地区へ行ったんだ。
ボルドーはワインの街だからね・・・。
僕は未成年だから飲めなかったけど、楽しかったよ。
美紀さんの帽子の上から眺めた葡萄畑は、美しかったな・・・。
ボルドーの後、パリにも行ったんだ。
やっぱり、パリってスゴイ!
ここではたくさんの美術館に行ったよ。
ノートルダム寺院の屋上からの眺めは凄かった。
ルーブル美術館に、ヴェルサイユ宮殿、装飾美術館、中世美術館・・・
いくつもいくつも見て歩いたんだ。
さすが芸術の都パリだなぁ・・・。
あまりに素晴らしくて、僕の小さな体ではとても受け止められないくらいだった。
夜寝たら、空っぽになって、またたくさん受け止められたらいいのにな・・・。
あこがれのエッフェル塔にも行ったんだ。
ぼんやり眺めながら、いろいろ感じてたんだ・・・。
そんな素晴らしいパリもあっという間だった。
・・・とうとう最後の日。
カイちゃんと美紀さんと僕は、セーヌ川沿いをぶらぶら歩いた・・・。
おいしそうなパン屋さんに立ち止まったり、ウィンドーのディスプレイを眺めたり、
お花屋さんにも寄ったよ。
カイちゃんも美紀さんも一つ一つに感動して、パルミエだのヒヤシンスだのうるさかった。
・・・・・・でもいいんだ。
僕は特別なことをしなくても、こんな何気ないことが好きなんだ。
カイちゃんが、素敵なビストロを見つけてランチをしたんだ。
感動の美味しさで、心の中まで温かくなった。
そういえば、ボルドーで美紀さんたちは、いつも普通のものを部屋で楽しそうに食べてたな・・・。
どんな美味しいものを食べるかよりも、どんな人と、どんなふうに食べるかが大切なのかな。
普通に歩いているこの道、この風景ももうあとわずかなんだね・・・。
何だかとっても不思議な感覚だよ。
フランスってとても遠いところなのに、今は普段の道みたいなんだ。
すごいところにいるのに、普通みたいなんだ・・・。
アパートに帰ってしばらくすると、チョシちゃんがお客さんを連れて帰ってきた。
ナント、ボルドーで別れたカノウさん家族と、このパリで偶然会ったんだって!
みんなで一緒に、温かいコーヒーを飲んだんだ・・・。
そのあと、スーツケースに荷物を詰めた。
僕、フランスで特別なものは買わなかったけど、
何だか見えないものがたくさん詰まっていっぱいだった。
僕の大切にしていたものは、フランスでも大切なものだったのかな・・・。
ボルドー記(10)和紙スイーツ・ワークショップ
展示会場で、毎日行われていたワークショップ
和紙スイーツは、「和紙で作る和菓子」
初めてのワークショップ
講座とは違う時間
この薄い和紙、どう感じるのかな。
どんな形になるのかな。
身振り手振りと、通訳の方に助けて頂いて・・・
包む、
重ねる、
紐状による、
形作る・・・
自由な形
自由な色
自由なデザイン
するすると形を変えていく和紙・・・
いつも見ていた光景が、ここではとても新鮮に映る。
和紙が、お菓子に、なってゆく・・・
終了後、全員で写真撮影の前でした。
お一人の女性が、書かれた感想を手に私のところへ来られ、
こう伝えて下さいました。
「私はこれから娘を迎えに行くので、もう帰らなくてはなりません。
いつも時間に追われ、慌ただしい毎日です。
でも今日は心ゆったりと、和紙でこんな美しい作品が出来て、本当に幸せでした・・・」と。
ワークショップ
講座とは、違う感覚
教える側も、教わる側もなく・・・
「・・・ご一緒できて、私もとても幸せでした。」